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旧家再生とは?大手リフォーム会社で検討中の方にも読んでほしい基礎知識と実例

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古い家の改修工事を考えていらっしゃる方は、インターネットで情報集するときに、古い家のことを「古民家」という呼び方だけでなく、「旧家」と呼んでいる方もいらっしゃることに気がついた方、多いのではないでしょうか。似たように思えるこの二つの言葉には、実はなんとなく古家の改修についての考え方にも影響する微妙な違いがあります。

 

「古民家再生」というのか、「旧家をリフォームやリノベーションする」と呼ぶのか。どちらも古い家を直すことを指しているのは間違いではありませんが、工事対象の建物を「旧家」と呼ぶと、家族の記憶や地域の歴史などをしっかりと受け継がないといけないような気がします。

 

この記事では、旧家と古民家の違いからはじまり、再生にあたっての具体的な考え方、設計・施工、費用のことまで、旧家再生を考えている方に向けた実践的なヒントを整理しています。

 

これから旧家と丁寧に向き合おうとしている方にとって、何かのヒントになれば幸いです。

 

旧家再生で考えておきたい5つのポイント

旧家をリノベーション・再生する際には、多くの視点からの検討が必要です。ここでは、特に大切にしたい5つのポイントを整理しました。

 

1. 建物の背景や記憶を読み解き、残す価値を見極める
旧家は単なる建物ではなく、家族の歴史や地域の記憶が刻まれた存在。まずは「何を残したいか」「なぜこの家を残すのか」を明確にすることが、再生計画の出発点になります。

 

2. 快適に住み継ぐための、耐震・断熱性能の確保
構造の安全性や断熱性は、現代の暮らしには欠かせない要素です。既存構造の良さを活かしながら、暮らしやすさを整える視点を取り入れることが求められます。

 

3. 昔の素材や意匠を活かすための柔軟な設計力
古材の再利用、木製建具、土壁など、旧家ならではの意匠は、手間をかけることでしか再現できない価値があります。こうした要素を活かすには、経験豊富な設計者や工務店との連携が不可欠です。

 

4. 精密な現地調査と段階的な工事計画の重要性
旧家には図面が残っていないことも多く、床下・小屋裏などの事前調査が不可欠です。一度にすべてをやるのではなく、優先順位をつけて段階的に再生を進める計画も現実的な選択肢です。

 

5. 将来を見据えた費用バランスとパートナー選び
地域工務店や大手リフォーム会社など、施工体制によってコストや対応力は異なります。原価率・調達力・柔軟性などの特性を理解したうえで、信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。

 

 

旧家再生の基本ガイド──古民家との違いと快適に住み継ぐ工夫

「旧家」とは何か?その定義と背景

「旧家」とは、長い年月をかけて家族が住み継いできた住宅を指し、建物の古さだけでなく、そこに宿る家族の歴史や地域との関係性が大きな意味を持ちます。庄屋や地主など、地域の中で特別な役割を果たしてきた家であることも少なくありません。

 

そのため旧家は、単なる“器としての建物”ではなく世代を超えて受け継がれてきた記憶や関係性を含んだ存在と捉えるのが自然です。家そのものの姿だけでなく、誰が住み、どのように暮らしてきたのかという背景にこそ、旧家の価値が見いだされます。

 

器として、建物の旧家を再生する際には、そうした“目に見えない価値”にも丁寧に向き合う姿勢が求められます。

 

 

「古民家」の特徴とは?

対して、古民家とはなんでしょうか。
一般的には、築50年以上が経過した日本の伝統的な木造住宅を指し、茅葺き屋根や太い梁、土壁など、昔ながらの建築技法が随所に見られる建物です。

 

実のところ、「旧家」も長く住み継がれてきた住宅であることが多く、建築的な仕様としては古民家に準じる部分も多々あります。ただし、旧家が家系や歴史的背景を含んだ“存在”として捉えられるのに対し、古民家は主に建物の構造や様式、素材に焦点を当てた用語といえます。

 

古民家の大きな特徴は、地域性に合わせた造りにあります。雪深い地域では急勾配の屋根、湿潤な気候の地域では風通しをよくする工夫など、暮らしの知恵が形となって残っているのです。

 

使用されている建材も、無垢材・土・竹・漆喰などの自然素材が中心で、経年変化による風合いも古民家ならではの魅力です。
現代の建材ではなかなか得られない、時間をかけて育まれた表情が、住まいの価値を高めています。一方で、断熱や耐震といった性能面では改修が必要となるケースも多くあります。

とはいえ、旧家・古民家を問わず、長く人の暮らしに寄り添ってきた家を、次の100年にふさわしいかたちで生かしていくことこそ、これからの住まいづくりに求められる視点なのかもしれません。

 

 

 

旧家・古民家リフォームとリノベーションの違い

古民家や旧家を再生する際によく耳にする言葉に、「リフォーム」と「リノベーション」があります。ただ、実際にはこの2つの言葉の境界はやや曖昧で、業界内でも明確に使い分けられているわけではありません。とはいえ、ある程度の共通認識は存在しています。

 

一般的には、「リフォーム」は老朽化した部分の修繕を目的とした改修を指します。水回りの交換や壁紙の貼り替え、外壁の補修など、古くなった部分を元の状態に戻すような作業です。つまり、“マイナスをゼロに戻す”というニュアンスが強い言葉です。

 

それに対して「リノベーション」は、既存の空間に新たな価値や用途を加える改修を意味することが多く、断熱性や耐震性の向上、間取りの見直し、ライフスタイルに合わせた再構築などが含まれます。こちらは“ゼロをプラスに変える”ような前向きな設計視点が特徴です。

 

このブログでは、リフォーム=修繕、リノベーション=刷新という定義で進めていきます。また、大手リフォーム会社や地域の工務店など、建築業者と話す際にもこの使い分けで言葉を選ぶと、意図が伝わりやすくなります。会話をスムーズに進めるうえでも、意識しておきたいポイントです。

 

とくに旧家を再生する場合、単なる補修では済まないケースが少なくありません。古くからの意匠や構造を生かしながら、現代の暮らしに合った形へ再構築する必要があるからです。必要な部分に手を加え、残すべきものを選びとる。それが、旧家や古民家のリノベーションにおいて最も大切な視点と言えるでしょう。

 

 

旧家・古民家再生における耐震・断熱の考え方

 

旧家や古民家を再生するうえで、欠かせないテーマが「耐震性」と「断熱性」の向上です。風通しや調湿性に優れた伝統的な日本家屋は、長年の風土に適応してきた建物である一方、現代の安全性や快適性の基準とは隔たりがあります。

 

耐震補強には、大きく分けて2つの方法があります。ひとつは、現代の新築工事でも広く採用されているような構造補強――たとえば、構造計算に基づいてコンクリート基礎を新設したり、柱に耐震金物を組み込んだりする方法です。

 

もうひとつは、既存の建物が持つ伝統構法の良さを理解し、その特性を活かすかたちで構造補強を行う方法です。伝統構法特有の柔軟性や粘り強さを尊重しながら、必要な箇所に補強を加えることで、無理なく耐震性を高めることが可能です。

 

いずれの方法を採るにしても、きちんとした構造計算に基づいた判断と設計が不可欠です。また、補強の優先度に応じて、意匠の変更をどこまで許容するかも重要な論点です。たとえば、耐震を優先して大胆に壁を変えるのか、それとも意匠の影響を最小限に抑えるために予算を多く割くのか。そのバランスの取り方は、計画全体に大きく関わってきます。

 

断熱に関しては、現代の快適性を実現するうえで重要なポイントです。床や天井裏には断熱材を充填できる空隙が確保されていることも多く、比較的スムーズに改修できます。しかし、壁や窓まわりの断熱は、意匠とのバランスを取るうえで非常に繊細な検討が必要です。

 

たとえば、壁が土壁である場合、新築のように柱間に断熱材を詰めると、調湿性や風合いを損なうおそれがあります。また、既存の木製建具をそのまま生かすのか、それとも高性能サッシに交換してしまうのかも悩ましい判断です。性能を高めたい一方で、見た目や手触り、空間の雰囲気をどう守るかという点では、簡単な答えはありません。

 

特に壁まわりは、内側から断熱材を貼る場合も、外側から付加する場合も、それぞれ意匠との取り合いが難しいのが現実です。断熱材を厚くすれば性能は上がりますが、柱や長押の見せ方、開口部の納まりに工夫が必要になります。ここはまさに、施工者の技量や経験が問われる部分であり、見た目と性能のバランスをどう取るかが、全体の仕上がりを左右します。

 

性能向上を目的とする改修は、快適さや安心を得るための大切な要素です。しかし、やみくもに現代の基準に合わせるのではなく、その家がもつ構造的・意匠的な特性を理解したうえで、適切な対処を選ぶこと。旧家や古民家を長く活かしていくためには、構造・意匠・暮らし方・予算、それぞれの調和が求められます。

 

 

どこまで残す?どこから変える?再生の方針を立てる

旧家や古民家を再生する際に最初に立てるべきなのが、「何を残し、何を変えるか」という方針です。たとえば、思い出のある建具や庭に面した縁側などは残したい一方で、屋根や断熱、設備まわりは快適性を優先して刷新したい――そのような価値の“バーター”が避けられないのが再生の現場です。

 

まずは建物の状態をしっかり把握することが大切です。傷みの激しい柱や雨漏りのある屋根など、物理的な寿命に達している部分については修繕や交換が必要です。その一方で、欄間の意匠や建具のガラス部分、時代感のある木の枠材などは、他の場所に転用することで活かすことも可能です。

 

たとえば、昔ながらの瓦屋根はその風格が魅力ですが、葺き替えには費用がかかるため、あえて軽量でメンテナンス性に優れたガルバリウム鋼板などに変更するケースもあります。また、壁の断熱改修においても、内側から断熱材を施工すれば室内寸法が減少し、外張り断熱を選べば外観が変わるなど、性能を上げるには意匠との折り合いが欠かせません

 

「全部を残す」ことにこだわると、かえって暮らしにくい住まいになってしまうこともあります。「記憶を残す」ことと「物を残す」ことは必ずしも一致しないという視点も必要です。素材を一部だけ使い、見せ方を変えることで、空間全体にかつての家の気配を取り戻すこともできます。

 

再生の目的は、単なる復元ではなく、これから先の暮らしに寄り添う“新しい住まい方”の提案です。古さを楽しみながらも、冬暖かく、生活しやすい家へと整えていく。そのための“変える”と“残す”の判断は、最初にしっかり軸を持つことが成功の鍵になります。

 

 

 

旧家再生のリノベーションでよくある疑問と考え方まとめ

工事に入る前にやっておきたいこと

旧家や古民家の再生では、実際に工事が始まる前の準備がとても重要です。新築工事と違い、既存の建物の状況を受け入れながら計画するため、見えない部分にどんな問題が潜んでいるか分からないという不確定要素があります。だからこそ、計画段階での丁寧な調査とヒアリングによって、現実的な予算や工期を見通すことが大切です。

 

まず確認したいのは、建物の履歴です。いつ建てられ、どのような修繕を重ねてきたか。図面や古い写真、過去のリフォーム記録があれば参考になりますが、実際にはそれらが残っていないことがほとんどです。そのため、大規模な工事を行う場合には、間取りや構造の精密な調査が不可欠です。特に床下や小屋裏といった普段見えない部分については、専門家による確認を入れておくと、全体像がより明確になります。

 

こうした調査は、経験豊富な工務店ほど的確に行います。非破壊での確認でも、構造的に注意すべき箇所をある程度予測し、あらかじめ見積もりに反映するような提案ができるのも、経験値の高い施工者ならではの視点です。これにより、着工後の変更や追加工事に振り回されることなく、最初の段階で予算全体の枠組みを把握しやすくなります

 

同時に、家族の「これからの暮らし方」を見つめ直す機会にもなります。今後の生活スタイルに合うようにどのように空間を変えるかを考えておくことで、設計段階でのやりとりが具体的になります。寒さを改善したい、収納を増やしたい、家族の動線を整理したい――そうした希望の優先順位を整理しておくと、計画と予算の調整がしやすくなります。

 

さらに、工事中に発見される“想定外”に備えて予備費を確保しておくと、金額的なブレ幅を減らせます。柱の傷みや基礎の補修、配管の交換などが必要になった場合にも、余裕をもって判断できる体制が整っていれば、無理のない調整が可能です。

 

そしてもうひとつ大事なのが、工務店や設計者との「共通言語」を持つことです。たとえば「雰囲気を残したい」「なるべく変えたくない」といった希望も、具体的な写真や施工事例と一緒に伝えることで、完成後のイメージのズレを防ぎやすくなります。

 

 

旧家再生で考えておきたい「耐震」と「断熱」

旧家を再生してこれからの暮らしに使っていくには、快適性や安全性の観点から「耐震」と「断熱」についての検討が欠かせません。どちらも新築と違って、既存の構造や仕上げを活かしながら行うことになるため、計画の段階から優先順位を整理しておくことが大切です。

 

耐震補強については、大きく分けて2つの方向があります。一つは、現代の新築木造住宅のように構造用合板や金物を使って耐震性能を高めていく方法。もう一つは、伝統構法の特性を活かしつつ、揺れに耐える構造バランスを整える方法です。いずれにせよ、しっかりとした構造計算に基づいて改修を行う必要があり、旧家の個性に応じた判断が求められます。

 

伝統構法を採用している旧家では、柱や梁の組み方、貫や足固めといった構造要素を活かしながら、補強を加えていくことも可能です。たとえば、壁を新たに設けて揺れに対する粘りを持たせたり、基礎を部分的にコンクリートに置き換えることで安定性を増したりする方法があります。

 

また、意匠と耐震補強のバランスも重要です。補強のために大きく間取りや意匠を変更するのか、それとも極力既存の雰囲気を残しつつ補強するのかによって、必要な費用や工事の内容も大きく変わってきます。その判断には、旧家の再生に慣れている施工者の経験がとても役立ちます。

 

一方、断熱については、建物の部位によって難易度が変わります。たとえば、天井裏や床下には空間があることが多く、そこに断熱材を充填することで比較的スムーズに性能を上げることが可能です。

 

しかし、壁や窓に関しては、断熱性能と意匠のバランスをどう取るかが難しいポイントです。特に土壁構造の旧家では、新築のように柱間に断熱材を入れるというわけにはいかず、外側から付加断熱を行うにしても、外観の表情が変わってしまうリスクがあります。

また、窓についても、昔の木製建具を残すのか、それとも高性能サッシに取り替えるのか、という判断が求められます。意匠性と快適性のどちらを重視するかで、選択肢が変わる部分です。ここでも、経験豊かな施工者が意匠との整合性をどう図るかが問われる局面となります。

 

 

旧家再生にかかる費用の考え方

旧家再生にかかる費用は、新築とはまた違った考え方が必要です。一見すると「建物があるのだから、新築より安く済むのでは」と思われがちですが、実際には 調査・補修・再構築にかかる手間と費用 が重なってくるため、同規模の新築と同等か、それ以上になることも少なくありません

 

費用の内訳を見てみると、まず着工前の調査・設計に一定のコストがかかります。図面が残っていないことが多いため、現地調査や詳細な寸法確認、構造の解析などが必要になります。さらに、耐震補強や断熱改修をどこまでやるかによって、金額に大きな差が出ます。

 

たとえば、耐震補強を現代基準に近づけようとすれば、それなりの構造補強工事が必要になります。また、断熱も床・天井は比較的施工しやすいものの、壁や窓にこだわる場合は、意匠との調整や特殊な施工が求められるため、コストも上がりがちです。

 

さらに、古材の再利用や左官仕上げ、木製建具など、伝統的な意匠や工法を取り入れるほど、材料の選定や職人の手間も増えます。
ただしそれは同時に、その家にしかない空気感や魅力を再現する大きな価値でもあります。

 

また、工務店選びによっても費用のかかり方が変わります。地域工務店などでは中間マージンが少ない分、建物そのものにかけられる費用=原価率が高くなる傾向があります。一方、大手リフォーム会社は標準仕様を前提にしたスケールメリットがあり、その仕様に合えば割安に建材を調達できる可能性もあります。

 

まずは「したいこと」や「しなければならないこと」をすべてリストアップして、見積もりを作ってもらう。そこから優先順位をつけて、今回実施する内容と将来に回す内容を見極めていくというアプローチも有効です。

 

また、昨今の経済状況を見ると、建材や設備の価格が上昇していくペースが速くなっています。そのため、将来的に必ず行わなければならない工事があるのであれば、予算との兼ね合いを見つつ、早めに着手することで結果的にコストを抑えられる可能性もあります。

 

すべてを一度に完璧に整えようとせず、現実的な計画と判断で進めることが、旧家再生を無理なく成功させるポイントです。

 

 

 

まとめ:旧家再生という選択に込める、これからの暮らし方

旧家や古民家を再生するということは、単なるリフォームではなく、その家が持っている歴史や記憶を、これからの暮らしにどう生かしていくかという、大きな問いへの答えを見つけていくプロセスです。

 

建物そのものの価値に加え、家族が過ごしてきた時間や、地域とつながってきた背景など、「残す理由」があるからこそ再生を考えるのだと思います。その意味で旧家再生は、ハードの改修以上に、ソフトとしての住まいの記憶や文化を未来に受け継いでいく営みでもあります。

 

そのプロセスでは、構造の安全性や断熱性能、日々の使い勝手といった現代的な基準に照らしながら、どこまでを変え、どこまでを残すかというバランス感覚が求められます。優先順位を整理しながら段階的に進めること、経験あるパートナーと対話を重ねることが、その判断を後押ししてくれます。

 

また、工事のタイミングについても慎重な検討が必要です。物価が上昇し続ける中で、将来的に必要となる改修であれば、早めに取り組んでおいた方がコスト面で有利になるケースもあります。

 

何よりも大切なのは、「なぜこの家を残したいのか」という思いを明確に持つこと。その思いをベースにしながら、住み手にとって本当に意味のある選択を重ねていくことが、旧家再生の本質です。

 

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