JOURNAL日誌と記録

古民家物件を探す前に必ず知っておきたい7つのこと

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    Date : Dec 9th Tue, 2025

    当社は2000年以降、古民家再生を毎年手掛けてきました。
    近年は古民家を購入されたい方からのご相談も増え、購入前に物件へ同行し、購入の判断に必要な建築的アドバイスをさせていただく機会が多くなりました。

    古民家再生を専門とする工務店だからこそ、みなさまが古民家物件の購入を検討される際に、事前に知っておくと役に立つ情報をまとめてみました。

    =====

    自然素材の木の香り、季節の光と風を感じられる大きな開口、梁や柱に刻まれた時間の深み。
    こうした魅力に惹かれて「いつかこういう家に住みたい」と思い、物件探しの第一歩を踏み出される方に、私たちは何度も寄り添ってきました。

    ただ実際に古民家を見に行くと、写真では分からなかった癖や課題が次々と浮かびます。
    「どこを見ればいいのか分からない」「この状態は直るのか」「費用の見通しが立たない」──こうした戸惑いを感じるのは当然です。
    古民家はすべて“一点もの”であり、築年数や環境によって劣化状況が大きく異なるため、判断が難しいのです。

    そこで本記事では、古民家再生の現場に長年携わってきた輝建設の視点から、物件探しの前に押さえておくべき7つの考え方をまとめました。
    初めて古民家に触れる方でも、読み進めることで「物件を見る目」が必ず変わるはずです。


    1.古民家に惹かれる理由と、その裏側にある現実

    古民家人気の背景には、“古いからこそ持つ豊かさ”があります。
    太く育った無垢材の美しい木目、手仕事でつくられた欄間や建具、漆喰壁、深い軒…。
    自然環境と共に暮らす文化が、そのまま空間の質として残っています。

    一方で古民家は、現代住宅とは性能も構造も考え方が異なります。
    湿気の影響を受けやすかったり、断熱材がほとんど入っていなかったり、耐震補強が必要であったり。
    「魅力」と「現代の暮らしとのギャップ」は表裏一体であり、この両面を理解した上で物件を見ることが大切です。

    特に、古民家を“古民家らしく”残すのか、“現代的にアップデート”するのか、方向性を早めに決めておくことも大切です。なぜなら、古民家探しのパートナーとなるのは、工務店さんや設計事務所。依頼先の得手不得手を理解した上で相談しないと思ったような工事が難しいかもしれません。

    特に、デザイン云々以前の雨漏りの補修や腐った柱の改修などの古民家ならでは修理ポイントに熟知した人を古民家物件選びのパートナーにするのが望ましいです。


    2. 立地と環境は“最初に見るべき”ポイント

    古民家再生 - 輝建設株式会社|暮らす日々が 思い出に変わる場所

    古民家探しで、建物の状態だけ先に見てしまうのは危険です。まず確認すべきは “どこに建っているか” です。

    古民家の多くは郊外や山沿いに立地し、現代の住宅地とは条件が大きく異なります。車が敷地まで入れるかどうかは、工事のしやすさにも日常生活にも直結します。

    道幅が狭い場合、資材搬入や足場設置が難しくなり、余分な費用が発生する可能性もあります。

    また、上下水道の状況、陽当たり、風の抜け、地域の法規制──こうした条件は現地を確認しなければわからないことが多いです。

    建物だけでなく「環境」を見ること。この視点を忘れないだけで、物件選びの失敗は大きく減ります。

    例として以下のポイントは必ず確認します。

    • 車が入れるか
    • 上下水道の状況
    • 日当たり・風通し
    • 隣地との取り合い(越境、被越境の有無)
    • 法規制・用途地域

    (※補足:市街化調整区域では改修に制限がかかるケースが多いため、特に注意が必要です。)


    3.古民家の“状態”は現地でしか見えない

    写真では素敵に見える古民家も、実際の状態は現地に行って初めて分かります。床下や屋根裏など、見えにくい場所ほど物件の価値を大きく左右します。

    床がふわついていたり、柱が傾いていたり、屋根に雨漏り跡が残っていたり。湿気の多い地域では土台や梁の腐朽が見つかることも珍しくありません。

    こうした劣化は、古民家の構造を熟知した業者でなければ正しい判断ができません。見逃すと、購入後の工事費が大きく膨らむこともあります。

    古民家選びは、“現地でどれだけ購入後の暮らしを想像できるか”が鍵です。経験者が同行すれば、再生に向いている家かどうかを高い精度で判断できます。

    以下は現場で必ず確認する代表的な項目です。

    • 基礎・土台の状態
    • 柱・梁の傾き
    • 屋根と雨漏りの跡
    • 断熱性・気密性

    床下点検口や小屋裏への点検口がない家も多く、購入前にこの辺りを確認できない場合があります。床や天井などを一部解体しないとその部分にアクセスできないためです。


    4. 費用の「全体像」を早めに掴んでおく

    古民家で戸惑いやすいのは、「物件価格より改修費のほうが読みにくい」という点です。屋根瓦の葺き替え、左官壁の塗り替え、耐震補強、給排水・電気設備の更新、断熱工事…。


    必要な工事内容によって費用は大きく変動します。

    そのため物件を見始めた段階で、

    • どこに費用がかかりそうか
    • どこは残せるのか
    • どこは新しくすべきか

    この“方向性”を掴むことがとても重要です。

    現地に同行した専門家が、将来の工事範囲やおおよその金額感を読み取れると、購入判断が一気にしやすくなります。想定外の出費も防ぎやすくなり、計画も安定します。

    主要な費用項目としては以下が挙げられます。

    • 物件価格+リノベーション費
    • 工期(古民家は新築より時間が必要)
    • 補助金(地域により耐震・移住などで支援あり)

    特に屋根・基礎・給排水の3点は、大規模費用になりやすいため特に重要です。また、住居に使用しない建物(離れや蔵など)、土塀や門屋など同一敷地内の建物の維持管理にも費用がかかることにも留意する必要があります。


    5. 快適性は「断熱」と「耐震」で大きく変わる

    古民家でよく指摘される「冬の寒さ」や「地震への不安」は、適切な改修で大幅に改善できます。

    断熱材がほとんど入っていない古民家でも、屋根・壁・床をバランスよく断熱することで、性能は大きく向上します。また、断熱以前に隙間だらけの建物がほとんどなので気密を高める工事は断熱材ほどの資材を必要としないのでぜひやっておきたい工事です。

    また、古建具や単板ガラスのサッシが多いため、窓の断熱向上計画はとても重要です。内窓や外付けサッシの追加で、熱損失を大きく低減できます。既存の木製建具を残しながら、それらを取り付けることも可能なので既存の雰囲気を崩さないように施工することも可能です。

    耐震補強は、その家が持つ架構の特徴を理解した上で行う必要があります。梁や柱のおりなる空間の美しさを損なわないように補強しつつ、“魅せる”デザインにすることも可能です。

    • 断熱(屋根・壁・床を総合的に)
    • 耐震(架構の理解と補強方法の適正化)

    伝統工法の良さを残す形での耐震改修や、現在の多くの新築工事と同様の考え方での家を固めていく方法での耐震改修どちらでも考えることはできます。相談する工務店さんや設計事務所さんと相談しながらになりますが、伝統工法の良さを残す形での耐震改修を行う場合は、対応できる工務店さんが限られる可能性もあります。


    6. 古民家の良し悪しは“誰と進めるか”で決まる

    解体・サルベージ - 輝建設株式会社|暮らす日々が 思い出に変わる場所

    古民家の購入判断で最も大切なのは、“パートナー選び”です。新築住宅とは異なり、古民家は職人の経験値や技術の幅が工事の質に直結します。

    柱・梁・継手・仕口など、伝統構法を理解した工務店でなければ、正しい判断や適切な工事が難しい場面が多くあります。

    古民家の雰囲気を残したいのか、現代風にアレンジしたいのか──依頼先の得意分野との相性も重要です。

    伝統構法の理解、古材の生け取り再利用、調査図面の作成経験などは、判断材料として非常に有効です。

    以下のポイントは信頼できるパートナー選びの基準になります。

    • 古民家の構造を理解した設計者や大工がいるか
    • 古材の扱いに慣れているか
    • 実例が豊富か
    • 物件見学に同行してくれるか

    実例が多い工務店ほど、費用や工期の読みも正確です。事前に金額がわからないとなかなか工事全体の計画を定めることができません。過去にそのような工事をしたことがあるのかどうかは事前に質問などをして確認しておくことをお勧めします。


    7.住宅ローンはつかえるのか。資金計画をサポートしてもらえるか

    古民家探しを始めた方からよく聞くのが、「物件は良かったけど、ローンのところで話が止まった…」というお悩み。建物の傷みや間取りよりも、金融機関との相性でつまずくケースは盲点かもしれません。

    木造住宅の法定耐用年数は22年とされています。この年数を大きく過ぎている建物は、実際にはまだまだ使える状態でも金融評価の世界では建物の価値がほとんど付かないとされることが多いようです。

    古民家は築50年、100年が普通なので、どうしても“評価が乗りにくい”という話がよく出ます。

    そして、もうひとつ言われているのが、古民家を入手しやすい地方の土地評価が低めなエリアでは担保評価が物件価格+リノベ費用に追いつかず、
    いわゆる「担保割れ」とされる可能性が高い点。

    返済期間についても“築年数に応じて短く設定される場合がある”と言われていて、その結果、月々の返済が重たくなるケースもあるようです。

    ここで大事なのが金融機関の選び方

    都市銀行さんのように全国共通のパッケージ型審査だと、古民家は条件に当てはまりにくいと言われます。

    一方で、地方銀行さんや信用金庫さんのように地域事情に明るい金融機関は、相談しやすかったり、物件ごとの個別性をしっかり見てくれたりと、
    前に進みやすいこともあります。

    「リフォームローン」といえば、無担保高金利で貸出額も500万円〜1000万円が上限といったものが多かったのですが、昨今のリノベブームで、「リフォーム一体型ローン」を積極的に取り扱っている金融機関さんもあって、古民家のリノベと相性がいいと思います。

    また最近は、古民家の“文化的価値”を評価の中に取り込もうとする機関も出てきています。

    例としては西日本シティ銀行さんの「ヴィンテージ住宅ローン」など。

    「古い=価値が下がる」一択ではなく、「古い=価値を見出す」という考えが少しずつ広がってきているのはうれしい変化です。

    古民家購入は、実は建物を見るだけでは完結しません。

    このあたりを早めに整理しておくと、無理のない計画で進められます。古民家再生やリノベーションの得意な工務店さんは、それらへの融資をしてくださる金融機関さんと連携していることも多いです。


    まとめ:古民家は“探し方”の精度で未来が変わる

    古民家を探す行為は、単なる中古住宅探しとは少し違います。
    その土地の歴史、気候、建て手の工夫、長い年月の痕跡を読み取り、未来の住まいとして再生する行為です。

    だからこそ、立地、環境、建物の状態、費用の目安、性能改善の方向性、そしてパートナーとなる工務店。
    こうした要点を押さえて進めることで、古民家は“想像以上に心地よい住まい”になります。

    最後に、古民家探しのポイントを簡単にまとめると──

    この順番を踏むだけで、古民家探しはぐっと進めやすくなります。

    輝建設では、物件探し段階での同行調査や、購入前の簡易診断も承っています。


    気になる物件があれば、ぜひ気軽にご相談ください。
    きっと一緒に、良い未来を描けると思います。

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